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シャイニーストッキング
第7章 絡まるストッキング 1
 22 ゆかりからの電話

 ブー、ブー、ブー…

「もしもし…」

 その電話はゆかりからであった。

「あ、わたしです、ゆかりです…」
 今、大丈夫ですか…
 たった一日ではあるがこのゆかりの声を聞いて少し昂ぶる、そして罪悪感も湧いてきていた。
 私はまだ、全然尖れなく、ワイルドにもなれていなかったのである。

「さっき二つのテレビ局との会議が終わったんです」
 そう明るい声で話してくるのだ。

「ああ、うん、お疲れさま、休日出勤で大変だったな…」
 やや声のトーンを下げてそう返す。

「今電話大丈夫ですか…」
「う、うん、大丈夫…」
 どうやらベッドで墜ちていた美冴がこの携帯電話の着信のバイブレーションの振動の響きで意識を戻した様である。
 そして私は立ちあがって、ベッドサイドからクローゼットの方へと話しながら歩いていったのだ。
 だがこのツインルームはいわゆる普通のビジネスホテルの部屋であるから狭いのである、いくらクローゼットの方へ行っても会話は筒抜けである。
 だから私には後ろで美冴が聞き耳を立てているような感じでいたのだ、そんな私の落ち着かない様子から勘の良いゆかりが
「あれ、誰かと一緒なんですか」
 と訊いてきたのだ。

「あ、うん、ちょっと、今、山崎専務と…」

 さすがに本当の事は言える筈もない…
 私は美冴に対して背中を向けて、やや声を落として話していた。

 すると美冴は気を利かせてくれたのか、音を立てないようにシャワールームへと静かに入ってくれたのだ。

 ああ…
 これで少し気が楽になった。
 だが、反面、情けない気持ちも湧いてくる。

 ダメだな、全然ワイルドになれない…

「あ、それで……」
 そんな私の気持ち等解る筈もないゆかりが、まずはいつもの佐々木ゆかり課長然となり今日の会議の内容や状況を話してきたのだ。
 美冴が気を利かせてシャワールームに入ってくれたお陰でこのゆかり課長の報告はちゃんと頭に入ってきたのである。

「そうか、そうなのか、あの杉山の父親がねぇ…」
 お台場のテレビ局の報道局長という事には驚いたのだ。

「でもこれからのいいコネクションになるな」
「はい、そうなんです…」
 お陰で赤坂と、東京タワーのテレビ局とも非常にスムースに進んだのだ、と報告してきたのである。

「今、何処にいるんですか…」
 





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