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シャイニーストッキング
第7章 絡まるストッキング 1
23 可愛い女

「今、何処にいるんですか…」
 急に話しを切り替えてきた。

「え、あ、あ、赤坂のホテルの…」
 山崎専務のもう一つの行きつけの赤坂のホテルの会員制のバーにいると、咄嗟に嘘をついたのだ。

「実はわたしは…」
 その営業の杉山と会議明けに東京タワーのすぐ元にあるステーキハウスで食事をして、今東京タワーの下にいるのだ…
 と、言ってきたのである。

 東京タワーの下か…

 咄嗟に私の脳裏には木曜日の夜にあの銀座の女の律子と過ごした、あの風景が、ライトアップされた東京タワーの情景が浮かんできたのだ。
 偶然に決まっているのだが、なぜかこの流れが必然にも思えてしまうのである。

「東京タワーのライトアップが綺麗なんです…」
 そう言ってくるゆかりの声から彼女の想いの全てが、この携帯電話を通して伝わってきて心が急に、ズキンと、痛んだのだ。

 ああ、ゆかりに逢いたい…
 そう想いが湧いてきた。

「浩一さんに……逢いたいです……」
 ゆかりはいつもの部長ではなく、私の名前を呼んできたのだ。
 胸が昂ぶってくる、だが、罪悪感も高まってくる。
 私はあの『黒い女』蒼井美冴と共にいるのである。
 よりによって、事ある毎にゆかりが心を乱し、淫らになる存在の『黒い女』と逢瀬をしているのだ。
 ザワザワと罪悪感が胸に騒めいてくる。

「専務とじゃ…」
 専務とじゃ無理ですよね…というゆかりの心の言葉が私の心を締め付けてきたのだ。

「い、いや、無理じゃない…」
 思わず、咄嗟に、想いが漏れてしまった。

 無理じゃない、嘘なんだから…

「ええっ、本当ですかっ」
 急にゆかりのトーンが上がったのだ。

「う、うん…」
 本当にゆかりは変わった、可愛い女に変わってきたのだ。

 以前はこんな感じで甘えた事などなかった、どちらかといえば比較的ドライな感じがしていた…
 私はこの嬉しそうなゆかりの声を聞いてそう想うのである。

 そう、甘え方を知らない感じだった…
 今、私の脳裏にはにこやかに微笑むゆかりの顔が浮かんでいた。
 もう後には引けない。

「そこからちょっと行くと…」
『プリンスパークタワーのスカイラウンジ』
 を指定して1時間後に待ち合わせをした。

「ありがとうございます、飲んで待ってますね…」
 そう明るい声でゆかりは電話を切ったのだ。







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