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シャイニーストッキング
第7章 絡まるストッキング 1
 40 笑顔

 わたしが今日まで思い返す限り、彼女、『黒い女』蒼井美冴の笑顔は見た記憶がないのである。

 雰囲気まで変わった
 まるで別人
 確か37歳、だがわたしと同じ位に見える
 全く違う女になったみたいだ
 そうだ、これは、変身、変身じゃないか…
 そう、彼女は、蒼井美冴は、変身したのだ。
 
 あっ…
 すると彼女はわたしの見つめる視線に気付き、こっちを見てきたのである。

 しかも笑みを浮かべて…

 ドキ、ドキ、ドキ、ドキ…

 わたしの心はその笑みのあまりにも自然さに、その美しさに、急に心が騒き、思わずその笑みに魅了されてしまうのを感じた。

 な、なに、あれは、だ、誰なの…
 とても『黒い女』蒼井美冴には見えない。


 すると笠原主任は、そんなわたしの驚いている様子を見て
「まるで別人みたいですよねぇ…」
 と、言ってきたのだ。

「あ、は、はい…」
 そう応えるしかなかった。
 すると蒼井美冴はお客様対応が終わって立ち上がり、わたしのデスクに歩いてきたのである。

「佐々木課長、木曜と金曜日に急にお休みしてしまい、申し訳ありませんでした…」
 ややハスキーな声でそう言いながら、頭を下げてきたのだ。

「あっ、いや、は、はい…」
 そんな彼女の言葉にわたしは不意を突かれてしまい、動揺を隠せない。

「迷惑掛けてしまって…」
 わたしの目を見つめてくる。

「え、あ、はい、そう、体調不良だったんだから、仕方ないですよ…」
 そう応えるのが精一杯であった。

「そうよぉ、蒼井さん、それに急きょ貴方の代わりに佐々木課長もオペレーターしたのよぉ…」
 さすが笠原主任である、わたしの動揺にサッと助け船を出してくれたのである。

「ええっ、そうなんですか、それは本当に…」
 そう恐縮してくる。

「うん、それは大丈夫、気になさらないで、あんな時はねぇ…」
 わたしは笠原主任の助け船で、少し落ち着きを取り戻す。

「ま、そういうことだし、蒼井さんもあまり気にしないでさ…」
 笠原主任がそう言いながら、核心に触れてくれたのだ。

「それよりさ、その、蒼井さん…」
 その急なイメチェンはどうしたの…
 そう訊いてくれた。

「えっ、あ、はい…」
 するとにっこりと微笑みながら

「うーん、まあ…」
 ちょっと心境の変化がありまして…





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