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シャイニーストッキング
第2章 黒いストッキングの女1
 8 部長 大原浩一 ②

 夫は浮気をした…

 それも当てつけのように同じ営業課の同僚の女に手を出したのだ。そしてわたしを妻として知った上で不倫を受け入れていた最低の女であるから、同じ課内にあることないことを言いふらしまくっていたのだ。

 実はわたしは大学入学までは勉強しかしてこなかったいわゆる大学デビューである。
 だから大学入学と同時に一気に弾け、今までのうっぷんを晴らすかのごとく遊びまくっていたのだ、更にオーストラリアに留学した二年間ではとても他人には言いえないくらいな悪い遊びもしたりしていた、だから見た目と中身は全く違いそれなりに腹は座り度胸もついていた。
 ただ、たまたま語学力があったから上手く就職できただけなのだ、そしてひととおり遊び尽くしたせいもあり就職後は心も落ち着き再び気持ちを改めてキャリア志向となり仕事を頑張り始めたのだ。

 だから大概のことには耐えられたのだが、夫と同僚の女との浮気により意図的に流布された悪意にはさすがのわたしもこれには狼狽え、動揺してしまい、ついに仕事で大きなミスを犯してしまった。
 このミスはとても重大であり損害もかなり発生するはずだった、しかしわたしは上司に恵まれたのだ、直属の上司はこのミスを生んだ状況を知り、理解して、同情までしてくれた、そしてこのミスが表沙汰に出ないように、わたしの将来の妨げにならないようにと必死に対策をしてくれて、なんと損害、損失等を最小限に抑えてくれたのである。
 その当時の上司に甚大なる協力をして助けてくれたのがこの大原部長なのであった。
 そしてその直属の上司の多大なる尽力のおかげでわたしの責任と名前は表には出ずに済んだのだ、だから当時別の営業第二部にいた大原部長はわたしのことは知り得ないはずなのである。
 わたしと彼、大原部長とは本人が知らないだけでこんな縁があったのだ。

 そして勿論、当時衝動的に入籍した浮気夫とは即刻離婚し、わたしの直属の上司の力でかなり遠くに左遷させられたはずである、だから唯一の汚点といえる結婚生活は僅かに10ヶ月間程度で終わった。
 その後わたしは懸命に仕事に励み、順調に実績を重ね、キャリアアップの為の異動先をこの大原部長の元へとわたし自身が選択したのである。
 
 ふと、そんなことを思い返しながらマールボロの煙草の煙を吐き出す部長の横顔を眺めていた…


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