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シャイニーストッキング
第8章 絡まるストッキング2 蒼井美冴
 13 矛盾

 ヤバい、また、抱きたくなってきた…


 ブー、ブー、ブー…

 その時突然、蒼井美冴の携帯電話が着信した。

 美冴は携帯電話をバッグから取り出しディスプレイを見る。
 だが、電話には出ない。
 多分、この着信はあの武石健太からの電話であると私には思われた。
 なぜなら時刻は午後11時を過ぎ、ちょうどカラオケが終わって解散したタイミングであろうと予想できる時間であったから。

「出ないのか…」
 私は思わずそう云った。
 
 おやっ、もしかして…

 そうなのだ、一瞬湧いたこのザワザワした感情は
 
 嫉妬なのか…

 私が武石健太に嫉妬しているというのか。


「うん…、知らない番号だし…」
 美冴のその言葉に、心のザワザワが増してきたのである。

 嫉妬なのか…

 まさか…


 その時

 ブー、ブー、ブー…

 すると今度は私の携帯電話が鳴ったのだ。
 この着信は誰からなのかは考えなくてもわかる。

「………」

 私は一瞬、バツが悪い感じになってしまうのだ、なぜなら、例えちょっとでも武石健太の着信に対して嫉妬心を覚えてしまったというのに、今度はこうして私自身にゆかりからの着信がきたのである、そんな嫉妬心などお互い様的な矛盾な想いでしかないからだ。

「出ないの…」
 美冴はわざとそう訊いてきたような感じがした。

「うん、後にするわ…」
 思わず苦笑いをするしかなかったのである。

 せっかくの二人の幸せな時間が、この電話の着信で終わりを告げられてしまったみたいであった。
 いや、私達のこの時間に対しての強制終了の合図なのであろう。

 だが、再び昂ぶってきていた気持ちが騒めいていて、治まってはいなかったのである。
 それ位に、まだ美冴の魅力に魅了されているのであった。
 私は思わず美冴をグイっと抱き寄せ、そして唇を寄せてキスをする。

「あんっ…」

「…あ………」
 そのキスに再び心が蕩けていくようであった。
 そして増してくる昂ぶりの想いのままに肩を抱きながら唇を吸っていく。
 
 だが美冴は突然、私の肩を押し、そしてスッと唇を離してきたのである。

 あっ…

「シャワーを浴びてから帰りますね…」
 するとそう云ってきた。

 それには
 今夜はこれで終わり…
 というメッセージの意味が込められているように感じた。





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