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シャイニーストッキング
第2章 黒いストッキングの女1
 11 迎える朝

 カーテンの隙間から差し込む朝日の光を受けて目を覚ますと、ゆかりはシャワーを浴びていた。
 私はベッドから起き上がり寝起きの煙草に火を点け、窓に歩み寄りカーテンを開ける、そして眼下に広がる雑然とビルが建ち並ぶ大都会の風景を見下ろした。
 私は朝、こうして高層ホテルの窓から外を眺めるというこの行為がたまらなく好きなのである。
 なぜなら女性と過ごした起き抜けの朝に、高層階の部屋から朝日に照らされたこの大都会をこうして眺められていることが、約20年前に北関東の田舎から上京して将来の不安を抱きながら今まで必死に働いてきた自分が、成功しているんだな、という一つの証だと実感できるからだ。
 私にとっていい酒、いい女、高層ホテル、これらは田舎にいた時に抱いていた大都会への憧れの象徴であり、成功の証のキーワードであった。
 そしてこの高層ホテルの最上階のバーでいい酒を飲み、高層階の部屋でいい女を抱き、朝を迎える、これらは自分の中の一つの成功の指針といえ、これを実感できる唯一の瞬間が、目覚めの煙草を咥え、カーテンを開け、眼下に広がる朝日に照らされている大都会のビル群を眺めるということなのだ。

 「あ、部長おはようございます」
 バスタオルをカラダに巻き、髪の毛をタオルで拭いながらゆかりが声を掛けてくる、もう呼び名は部長に戻っていた。

 「また外眺めてるんですかぁ」
 「うん、まあ…」
 「今日このまま会社に行きますね、着替えも持ってきましたし」
 「そうか、土曜日なのに…」
 コールセンター業務だから通販と損保は基本休みはないのだ。

 「いいえ、ちょっと片付けたい案件があるんで…」
 「じゃあ私も少し遅れて顔出すよ」
 「えっ、大丈夫ですよ、すぐに処理できますし、終わったらチーフに任せて帰りますから」
 基本的に土日祝日は社員は休みとなっており、その代わりにローテーションで課長か係長クラスの社員一人が出勤するカタチを取っていた、そしてその他に部門別にスタッフの中にも主任もしくはチーフという地位を決めて、トラブルに対応する仕組みを作っていた。
 「えっ、そうか、じゃあ終わったらランチでもするか?」
 「えー、そんなこと言うなんて珍しい…」
 微笑みながら応えるのだが、なんとなく目が語り掛けているような感じがする。

 昨夜のこと誤魔化そうとしてるの…と

 
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