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シャイニーストッキング
第9章 絡まるストッキング3      大原本部長と佐々木ゆかり部長
 11 普通…

「うん、サラリーマンだからな…」
 彼はそうポツンと呟いた。
 
「そうよね、それに、まだ終わってないから…」
 我慢します…
 まだ生理中で抱いてはもらえないのだ、だから仕方がない、我慢なのだ。
 わたしは精一杯頑張って笑みを浮かべてそう言った。

 そしてタクシーを拾う。

「じゃあまた明日です…」
 わたしはタクシーの後部座席に座り、窓を下ろし、そう呟きながらキスをする。
 お休みのキスである。
 すると意外にも、彼はすんなりとキスを受けてくれたのだ。
 きっと彼なりの思いやりなのだと思われる。

「う…ん、また明日…」
 そしてそう言う彼に
「あ、そうだ、シャネルのお姉さんによろしくです…」
 せめてもの最後の抵抗と、釘を刺す意味も込めてそう言ったのである。

「あっ、ああ…」
 そんな嫌味にドキッとした顔をしたのだが、わたしが先に笑って手を振ってあげたのだ。

 大丈夫、何も不安などない…

 そしてタクシーを走らせる。

 大丈夫、何も心配などない…

 男の、いや、サラリーマンの世界なのだ…

 仕方がないのだ…

 何も、不安などないのだ…

 大丈夫、寂しくなんかないのだ…

 走り過ぎていく車窓からの夜景を見ながら、そう想っていた。
 そして逆にそんな複雑な心境が湧いてきている事に違和感を覚えていたのだ。

 やはり、これが愛なのか…

 これがちゃんと人を愛するという事なのだろうか…

 これから彼が銀座のクラブに行く、素敵な、綺麗なお姉さん方が沢山いるクラブに行くのだ。

 このザワザワ感や、微妙な嫉妬心が湧く事は普通で、当たり前なのだ…
 そう自分に言い聞かせていく。

 これが普通なんだ…

 普通…

 この前、笠原主任と二人で食事に行った…

 初めてカラオケに行って、初めて人前で歌った…

 初めて部下達とミーティングを兼ねて食事に行った…

 普通に当たり前の事をどんどんしていく、そして普通のいい女になっていく、いきたい…

 普通に好きになって愛を知りたい…

 それが今なのかもしれない…

 あとは…

 あとはなんだ…

 あ…

 そうだ…

 友達だ…

 友達がほしい…

 電話で気楽に話せる友達…

 買い物に行ける友達…

 映画も行きたい…

 食事や飲みにも…

 友達が…ほしい…



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