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シャイニーストッキング
第9章 絡まるストッキング3      大原本部長と佐々木ゆかり部長
 46 山崎専務の恐ろしさ

 だが、だからといって、正社員採用が僅か三日でのコールセンター部主任はあり得ないのである。

 誰が、いったい誰が、彼女を、蒼井美冴さんの優秀さを、隠しダマのことを、山崎専務派側に知らしめたのであろうか…
 ある意味、これが一番怖かった。

「あの、蒼井美冴さんのコールセンター部主任の件は…」
 大原本部長が推薦かなんかしたのですか…
 と、尋ねてみる。

「いや、確かに少しは褒めたのだが…」
 主任には推してはいない…
 と、言ってきた。

 じゃあ誰なのか…
 誰が彼女の潜在能力の高さを知っている、認めている、というのだろうか。

 あっ、笠原主任か…
 そうだ、笠原主任がいた。

 そうだわ笠原主任かもしれない
 彼女は以前から何かと蒼井美冴さんのことを褒めたり、わたしに推してきたりしていたのだから…
 可能性はかなり高い。

 だが、まるで、こんなスパイ的な事など…
 するようには考えられなかったし、感じられなかった。

 いや、本人にはそんなスパイ的な、観察的な自覚はないだけで、言葉巧みに誘導され、気軽に話しただけなのかもしれない…

 じゃ、それは誰に話したのか…
 まさか山崎専務と笠原主任の直接の繋がりは考えられないし、想像もつかない。

 やはり誰かはいるのだ、山崎専務の『スパイ』的な存在の誰かが…
 ただ、本人には全く自覚がないのだろう。
 そんな疑惑を感じるような人は今のところ考えても身近にはいないし、全く感じない。

 逆にそれが一番怖く、山崎専務の恐ろしさなのかもしれない…

『山崎専務の傀儡なんだ…』

『生保側にも秘かに沢山山崎専務派がいるんだよ…』

『昨日、本社に行ったのも知られている…』
 
 本人に自覚がないこと…
 それが一番怖かった。

 だが、それはそれで、わたし達は悪い事をしているわけではないのだ。
 それも成功すれば山崎専務の更なる飛躍に繋がる訳であるし、わたし自身の更なるキャリアアップに通じるのである。

 なんとかこの存在を調べ、逆に利用できないだろうか…


「今は、止めておいた方がよいかもな…」
 大原本部長はそう言ってきた。

「逆に、何でも知られてしまう、という事を逆手に取る方法を模索した方がよいかもな…」
「やはりそうですかね…」
「うむ、やはり山崎専務はすごいや…」




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