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シャイニーストッキング
第9章 絡まるストッキング3      大原本部長と佐々木ゆかり部長
 50 ゆかりの視線

 私は改めて山崎専務の怖さを実感しながら、目の前でやはり山崎専務の恐ろしさを感じていた佐々木ゆかり部長に話しをしていた。

「ああ、今は、今は大人しく、粛々とこの新規事業をうまく行くように頑張っていき、山崎専務を足場にする、という方向に歩んだ方がよいと思うな…」
「ま、それはそうですけど…」
「うん、今はそれがいい…
 今は足元をしっかり固め、寝首を掻かかれないように、周りを固めること、これが、今は、一番だと思うぞ…」
 そうなのだ、今はこの新規事業を是が非でも成功させ、そして山崎専務の力をうまく利用して次なるステップアップ、キャリアアップへと繋げていくしかないのだ…
 と、ゆかりに伝えたのである。


「ところで…」
 するとゆかりがいきなり話題を変えてきたのだ。

 ドキッ…

 実は少し遅れてきた時からなんとなくゆかりの視線を感じていたのである。
 遅れてこの会議室に入り、彼女と視線が会った瞬間から、一目見た時から、話した瞬間から、ゆかりの視線から感じる違和感が、怪訝な表情があった。
 そしてゆかりはじっと私を見てくる。

 ドキッ…

「な、なんだ…」
 そのゆかりの目を見て、一瞬にして私は狼狽えてしまう。
 ゆかりの視線がネクタイを見つめていたのだ。

 ま、まさか…
 
 またネクタイがあのキャラクター柄なのか…
 思わず確認したのだが普通のえんじ色のペイズリー柄である。

 じゃ、なんだ…

「えっ、いや、別に…」
 そう冷たく言う。

 ドキッ…

「………べ、別にって…」
 別にってなんだ…
 私は一気に挙動ってしまう。

「いや、なんか…」

「うん…」

 ドキッ…

「そのネクタイ…が…」

「えっ」

 や、やはり、ネクタイか…

「ネクタイの趣味が…」

 ネクタイの趣味って…

 確かに、今朝寝坊をしてしまい、銀座のホステスである松下律子のマンションから直行してきた。
 そして下着一式、ワイシャツ、ネクタイも、なぜか一揃いある律子の部屋から借りて着てきたのではあるのだ。
 そして前回は律子の悪戯心からネクタイ柄が、某夢の国の『ダック』というキャラクター柄のネクタイをしてしまい、大変慌てた想いがあった。
 だから借りたネクタイ柄はよく確認してきたのだが…

 どうやら普段の私のネクタイ柄と違うというのだ…



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