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シャイニーストッキング
第9章 絡まるストッキング3      大原本部長と佐々木ゆかり部長
 51 貴方に首ったけ…

 どうやら普段の私のするネクタイ柄と違う…
 と、いう事をゆかりが言ってきたのである。
 確かにこのペイズリー柄は普段はしない、ていうか持ってはいなかった。

 だが、ゆかりは私の家のクローゼットを見たことはないし、前回の事があったので出勤前に鏡を良く見て再確認してきたのだが…

 趣味が違う…
 と、言われてしまったのだ。

 趣味と言われても…

 実は今持っているネクタイの9割が別れた元妻の買い揃えたネクタイなのであり、そのネクタイの趣味は元妻の趣味という事なのである。

 貴方に首ったけ…

『女がネクタイを選ぶのはそんな意味があるのよ…』
 と、元妻はよくそう言っていた。
 元より私はあまりファッションに対して無頓着であり、元妻によって交際していた頃からから仕込まれたのである。

 だから趣味が…
 と、言われても困ってしまうのだ。
 このネクタイも、今朝、律子が選んだモノであり、私自身は『ダック』の柄のみ注意していた位なのである。

 まいったなぁ…
 ゆかりのチェックが細か過ぎる気もするのだが、やはり勘の鋭さは生きていた。
 私はドキドキしてしまう。

 
「佐々木室長っ、すいませーん…」
 その時、越前屋朋美がゆかりを呼んできたのだ。

「あっ、はい、今行く…」
 この越前屋の声掛けは、私にとっては、実にいいタイミングであった。
 それに周りにはこの準備室のメンバーがいるのだ、こんなネクタイの趣味等の話しを誰が訊いているかわからない。

 とりあえず助かった…

 あまりにも不意を突かれてしまい、心が揺れ動き過ぎてしまって、これ以上の対応が仕切れない。
 ここは一旦仕切り直しをしたいタイミングであったのだ。

 助かった…


「本部長…やっぱり…なんでもないです…」
 するとゆかりは、やや意地悪気味な笑みを浮かべ、私を一瞥し、越前屋の方へと向かっていった。

 ドキドキしていた。
 
 やはりゆかりの勘は鋭い…
 なんかあの目が、全てを見通ししているような目に見えたのである。
 
 今日は大切なこの新規事業の初日なのである、仕事に集中したいのだ。

 ただでさえこの配置構成のあまりにも適材適所過ぎる事に逆に狼狽えてしまい、違和感さえ感じてしまっていて、改めて山崎専務の恐ろしさを実感していたところなのである…




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