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第9章 絡まるストッキング3　　　　　　大原本部長と佐々木ゆかり部長

　58　美冴の困惑

「佐々木室長、なぜわたしがコールセンター部の主任なんですか…」
　わたしは発表された配置に対して困惑し、そして戸惑い、思わず佐々木ゆかり室長の元へと訊きにいったのだ。

　このわたしが新規事業のコールセンター部の主任なんてあり得ないのだ…


「ええと…」
　するとなぜかゆかり室長の歯切れが悪い。

「皆さんを差し置いて、わたしが…」
　わたしはは本当に困惑していた、今にも泣きそうな位であったのだ。
　するとゆかり室長はなぜか呆然とし、わたしの顔を見てくるのである。

　なんだ、なんでそんな顔をしてくるんだ…

　あ、この顔、この目…

　以前のよくわたしを見てきていた…

　あの、憧憬の目だ…

　なぜ、今、その目なんだ…

　まさか…

　「なぜなんですか、理由が…知りたいです…」
　そのわたしの言葉で、彼女は、ハッ、と我にかえったようである。
　
　まさか…

　ゆかり室長もこのわたしの配置は知らなかったのか…
　そんな疑惑が浮かぶ。

「あっ、ご、ごめんなさい…」
　なぜか謝ってくる。

「えっ…」
　そして今度はゆかり室長が戸惑ってるようなのだ。

「え、ええと…」
　
　やはり、この配置はゆかり室長の知らない事なのだろう…
　そう思った時であった。

「あ、蒼井くん、実は、私が推薦したんだよ…」

　えっ…

「えっ…大原本部長が…」
不意に、わたしとゆかり室長の後ろからそう本部長が云ってきたのである。
　どうやら、困惑しているわたし達二人の様子を見かねて来たようなのだ。

「ああ、正にキミがぴったりじゃないか…とね」
　
　まさか、そんな…

「そ、そんな…」
　わたしは思わず動揺してしまう。

「事前にキミに伝えなかった事は悪かった…
　だが、事前に伝えたらキミは断るだろう…」

「え、ま、まあ、そうです…」
　もっともな意見である。
　だが、その大原本部長の言葉にゆかり室長も少し動揺をしているようなのだ。
　
　どうやらゆかり室長は本当にわたしの配置の事は知らなかったらしい…

　わたしにとって大原本部長の存在は絶対なのである、本部長の言葉には説得力があった。

「とりあえずコールセンター部の主任をお願いしたいんだが…」

「は、はい…」
　断ろうと思っていたのだか、彼の、大原本部長の顔を見ていたら断れなかったのだ。