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シャイニーストッキング
第9章 絡まるストッキング3      大原本部長と佐々木ゆかり部長
 127 愛の高まり

 律子を手放したくはない…

 私はそんな心の衝動の昂ぶりに律子を強く抱き、抱き直し、抱き締め、口吻を、キスを、舌先を律子の唇に割り込ませ、舌を吸う。

「あぁ、あなた…」
 そしてようやく律子は感極まった喘ぎを漏らし、私の舌を受け入れてくれる。

 律子を…

 いや、ゆかりを…

 いや、美冴もそうだ…

 彼女達を悲しませてはダメなのだ…

 それは、尖る、という事ではない筈だ…

 私はついこの前に、三人共に手放してはダメだ、一人でも無くすようならば全部、全てを失ってしまう…
 と、自分でそう自覚したばかりじゃないか。
 そしてこれから先に迎えるであろう荒波を乗り込えて行く為の、尖る、とはそういう事だと自覚した筈である。

 ダメだ、ダメ…

 まだまだ自分は甘い…

 そしてこの律子をも、甘く考え過ぎなのだ…

 そして私は唇を離し、律子を見つめる。

「あ、あなた…」

「うん…」
 すまん…
 目で、そう伝える。
 そして改めて律子の目を覗くように見つめていく。

 ほら、彼女の目の奥からは、深い闇を感じるじゃないか…

 律子は心の奥深くに大きな闇をしまってあるじゃないか…

 律子を甘く考え過ぎなのだ…

 いや、お前は全部が甘いのだ…

 私の自虐は止まらない。

 ああ…


「あ、あの、ごめんなさい…」
 すると律子がそう囁いてきたのだ。
 まるで私の心の中の自虐心との葛藤を感じ取ったかのようである。

「あ、いや…」

「ごめんなさい、なんとなく…」

「うん…」

「なんとなく、電話がイヤだったの…」 
 律子に先を超されてしまった。
 ますます自虐が昂ぶる。

「い、いや、私こそ、無神経だった…」
 そして
 すまない…
 と、言葉で云おうとした時であった。

 黙って…
 と、律子は云うかのように、私に再び、そうそれはまるで口を塞ぐかのように、唇を押し付けてキスをしてきたのだ。

 あっ…

「………」

 その律子のキスを受けて、私より、私なんかより、律子の方が遥かに上にいるように感じてしまう。

 40歳の私は、28歳のこの律子に圧倒されてしまっていたのである…

 しかも私はそんな律子にすっかり、心を惹かれ、魅せられ、魅了されてしまっていたのだ。

 律子への愛の高まりを自覚してきていた…






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