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シャイニーストッキング
第10章 絡まるストッキング4      和哉と美冴1
 52 5年前、あれから…(38)

「イヤよっ、和哉っ、そんなにわたしを見ないでっ」
 わたしはそんな自虐に耐え切れなくなりつつあったのだ。

「み、美冴さん…」
 すると和哉はわたしの名を呼び、緩い拘束具から両腕を抜き、下から両腕を回して抱き締めてきたのである。
 そしてその勢いのままに上体を起こし、キスをしてきたのだ。

 あっ…
 
 その突然の抱擁に、そのキスに、和哉の熱い想いが入り込んできて、わたしの心が震えてきたのである。

 あっ、ああ…

「美冴さんは、汚くなんかないですっ…」
 そして唇を離し、そう囁いた。

「美冴さんは汚くなんかない…」
 それはまるで、泣き叫ぶ駄々っ子をなだめるかのような口調で囁いてきたのだ。
 
 えっ…

 聡明な和哉には、わたしのこんな自虐の、そして罪悪感の想いがわかっていたのだ、いや、伝わったのかもしれない。
 そしてこのわたし自身の心の乱れを敏感に察知をし、慰め、なだめてくれてきたのであると思われた。

 
「美冴さんは汚くなんかないです、綺麗です…」

「ち、違うのっ、和哉、違うのよ…」

「いやっ、違わないですっ」
 その、やや強い和哉の口調が、わたしの乱れた心の揺れを止めてきた。

「ぼ、僕は、僕は…」 
 自分の想いで、意思で、美冴さんとこうしているんですからっ…
 そう云ってきたのだ。

 自分の想い、意思…
 
 やはり和哉はわかってくれている…

 そんな和哉の言葉に再び心が震えてしまう、いや、蕩けてきていた。

 そして和哉はその自身の心の慟哭を話し始めてくる。

「初めは興味津々の想いだったし、ただ、やりたいだけでした、そして憧れでした…
 だけど…
 だけど、次の日の、帰り際に僕は美冴さんの迷いと戸惑いを、表情と声でなんとなく感じてしまったんです…」

 ああ、和哉…
 わたしは彼の言葉に、既に、心が震えていた。

「そんな美冴さんの想いは、さすがに高校生の、子供の僕にだってわかります、いや、わかっています…
 だからその夜、家に帰って一人考えました…
 そして美冴さんの大人としての想い、後悔、迷い、そして戸惑い等の気持ちはこんな僕にも分かったし、伝わってきたし、予想できたんです…」

 そしてその和哉の言葉には、その想いの優しい響きも感じていた…





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