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胡蝶の夢
第8章 夢

ゆっくりと時間をかけて息を吐いた。
静まりかえった無音がじわじわと侵食して僕の意識をくびる。
黒崎は足を組んでベットの上に腰かけ沈んだまま、頬杖をついて言った。
「始めろよ…」
下げたままの後頭部に上から声がする。
それが何を意味するのか、僕は知っている。
強く奥歯を噛む。
床についた拳を握り締める。
そうやって悔しさに耐えるしか今は道が無い。
「はやくしろ……グズグズするな」
また黒崎の身動ぎでスプリングが鳴る。
僕は静かに起き上がった。
顔を上げ、出来るだけ瞳に動揺を映さない様にして黒崎を見つめる。
深い絶望と淫らな欲望を宿した従順な奴隷。
そんな粗末な存在に見えればそれでいい。
いつかの復讐のための術。
そう思えば辱しめも少しはマシ。
本当にほんの少しだけでも良い。
自分で自分を許す理由が欲しいから…。
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