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胡蝶の夢
第9章 華
カシャン……
静まりかえった部屋に耳障りな音が響いた。
またか。
「すみません…」
消え入る様な声のした方向を一瞥して深く息を吐く。
どうやらスープ皿の上にスプーンを落としてしまったらしい。
なんてどんくさい奴だ。
テーブルを挟んだ向こう側でワタワタしている想世を見ながら思った。
すぐに使用人が駆け寄って来て、新しいスープとスプーンに置き換えていく。
この慌ただしいやり取りも対外見飽きたな。
想世が何度もこぼすので、メイド達も慣れたものだ。
ここしばらくぼんやり呆けている想世の姿は見ていて腹立たしい。
食べ物をただ口に運ぶ事すら出来ないのか。
不出来な妹を持つと苦労する。
不出来、か……。
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