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胡蝶の夢
第9章 華

日の光が目映い程に濃く長くなる影の様に…。
疎まれる影はもう沢山だ。
キッと腹いせとばかりに使用人を睨み返すと、圭を後ろに庇いながら少したじろいだ。
『なんて野蛮な子供だ』…使用人の心の声が聞こえるようだ。
俺への評価などその程度だろう。
ずっとこの家で暮らしていたボンボンと一般家庭の、それも底辺の財力で育った子供が比べられる立場にある事自体、逆に驚きだ。
マナーも何も、ナイフとフォークでご飯を食べた事すら無かったのだ。
疎むならば、なぜこんな場違いなところに俺を呼んだのかと問いたい。
心の内に苛立ちばかりが募る。
突然「お迎えにあがりました」なんて言って連れて来られたのは、つい先日の事だ。
忘れもしない。
初めて俺を見た時の親父の目。
つまらないものを見る時の興味の無い冷えた眼差し。
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