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胡蝶の夢
第9章 華

「お…やじ…?」
脱力感が身体を襲った。
勝てる気がしない。
それどころか思いだすだけで肩が震える。
つい先程『寛継のためならどんな事もしてやる』と思ったばかりなのに。
この屋敷の、黒崎の頂点に君臨するあの男を恐ろしいと思う。
「どうして…?」
何故と聞くのが精一杯だ。
「………」
それでも寛継は答えない。
なんだか自分がちっぽけで情けなくなった。
無力過ぎて反吐が出る。
自分の事さえ守れない俺には、他人を守る力なんてない。
強く寛継のシャツの襟を握った。
悔しい…。
何の力もない、権限もない。
俺は後継者にはなりえない、取るに足らない存在だ。
自分がなぜこんなところに連れて来られているのかもわからない。
俺はちっぽけだ。
圭という存在がいる限り…。
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