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胡蝶の夢
第9章 華

__「あっちに行こうよ!!」
窓の外から声がした。
その楽しそうな声は聞いた事の無い声だった。
放心していた俺は何気なく、それは音のした方向への反射の様にふとそちらを見たのだった。
寛継を問い詰めて窓際にいたという事もあり、そこからは窓の外の様子がすぐに見えた。
庭に知らない男の子がいる。
歳は自分と同じくらいだろうか?
小柄でどこか頼りなげだ。
彼を見て思った。
どこか、圭に似ていると。
「早く、あっちにさっき大きな鳥がいたんだ!!」
振り返りながら歩くその後ろには、圭が続いて歩いていた。
「大きな声を出したら駄目だよ。静かに行かないと逃げてしまうよ、瑞貴」
楽しそうに朝日を浴びて二人が通り抜けて行く。
なんだ、本当に俺は必要無いじゃないか。
あっちの方がよっぽど兄弟らしい。
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