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胡蝶の夢
第9章 華

涙が止まらなかった。
なぜだろう。
どうしてこんなに悲しいのだろう。
圭さえいなくなればと思っていたはずなのに…。
それなのに…。
圭が赤く染まったナイフを差し出す。
俺はそれを静かに受け取った。
ドロドロの柄が俺の手の中にしっかりと収まるのを見届けた後、圭は安心したように腕を落とした。
俺はこれを誰にも見つからない場所に隠さなければならない。
そして密かに処分しなければならない。
圭が『何者か』に襲われた様に見せかけるために。
犯人は圭を襲い、凶器を持ったまま逃走した。
そう……見えるように。
この事件が圭自身が行った『自殺』だとバレないように…。
圭から俺へ、初めての頼み事だった。
自殺を他殺にして欲しいと言われた。
凶器を隠して欲しいと。
「直弥……、ごめ……ね……」
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