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胡蝶の夢
第9章 華

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真っ赤だ。
両手が真っ赤だ。
なぜだか両目からぽろぽろ水が流れる。
見下ろす先には圭が微笑んでいて、俺に手を差し伸べている。
「ごめん…ね……」
こんな時でさえ、コイツは俺に微笑む。
草原の上に転がっている圭を見下ろしながら、俺は茫然と立ち尽くしていた。
最期の時を迎えようとする圭は、それでも何か伝えようとしていた。
「ありが…と…」
俺に感謝を……?
血塗れの圭と自分の両手を交互に見る。
止血しようとしたのだ。
傷口をめいっぱい押さえて付いた血だ。
けれど、いくら押さえても血は止まらなかった。
大人を呼びたかったけれど、圭はそれはやめて欲しいと願った。
俺には圭を助ける事は出来ない。
「あり…がと…」
笑ったままの圭の目から一筋涙が流れた。
「これで…いいんだ……」
遠い目をして圭が空を仰ぐ。
通り抜けた風が圭の前髪を揺らした。
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