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胡蝶の夢
第9章 華
俺はその足で自室へ向かう。
すでに寛継が準備を終えている頃だろう。
『いつも通り』…。
なんてものを日課にしているんだ。
自室の奥の白い牢屋は、俺の混沌の吐き溜めだ。
足繁く通うような場所か?
圭の最期を共有したただ一人。
圭が忘れられたくないと怖れた相手。
大切な人の心に大きな傷口を開いてでも、圭が残りたいと願った相手。
それでも俺は…。
圭は俺と瑞貴に何を残したかったのだろう…。
無駄に長い廊下を自分の足音だけが追いかけてくる。
自室への廊下は屋敷の中枢から少し遠い。
子供の頃追いやられたあの部屋のままに、今も同じものを使っている。
あの場所が一番良く庭が見えるのだ。
よく圭と瑞貴が遊んでいた綺麗な丘も見える。
自分への戒めなのか、名残惜しいのか、部屋を離れられない。
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