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胡蝶の夢
第10章 心無いモノなら
真っ白な部屋に光が落ちた。
外で小鳥が騒がしい。
僕はぐしゃりと頭を掻いた。
寝起きの目はまだ虚ろで、動くと身体があちこち痛い。
あんまり起き上がるのが面倒なので、もう一度ベッドに潜り込もうとすると、独りのはずの部屋に声が響いた。
「もうそろそろ起きてはいかがですか?」
僕は驚いて跳ね起きる。
聞かない声だ。
黒崎じゃない。
「失礼しました。初めて御目に掛かります。寛継と申します。どうぞ御見知り置き下さい」
壁際に立ち尽くしたまま、突然現れた彼は名乗った。
なんなんだ。
僕は不審な人物を睨みつけた。
また有りもしない僅かばかりの希望を与えて、そして奪うための茶番かと疑ったのだ。
この寛継も黒崎の手先に違いない。
「主人から貴方の世話を仰せ付かっています。多忙な直弥様の御手を煩わせる事もありません。何か御用の際はこの寛継に御言いつけ下さい」
企みが有るか無いかを量ろうとしたが、業務的な淡々とした口調からは感情を推し量ることは難しかった。
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