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胡蝶の夢
第10章 心無いモノなら
「どういう意味?」
「さぁ?ただ…、そんな気がしただけです」
ひと通り処置を終えて巻いた包帯を止めると、寛継は立ち上がった。
「さぁ、向かいましょう」
部屋の扉が開かれる。
何を思ったのか?
何が言いたかったのか?
僕たちは互いに憎みあい、嫌悪しあっているというのに、嫌いじゃない?
そんな訳がない。
それ以前の問題だ。
あるのは蔑みと支配だけ。
腰かけたベッドから立ち上がると、足の裏にじわりと痛みが拡がった。
それでも包帯が巻かれてある分、いくらかマシだ。
「瑞貴様はお強いのか儚いのか、よくわからない方ですね」
歩みがちょうど寛継の脇を過ぎようという時、寛継が口を開いた。
「貴方は夜叉にはなれませんよ」
振り向く隙も無いうちに、寛継は僕の手首を取ると後ろ手に引き上げた。
そのまま壁に押さえつけられる。
「貴方は人を欺くのがお上手じゃない…」
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