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胡蝶の夢
第1章 ピアノ
真っ暗闇の空は今日も切り取ったような蒼白い月を掲げていた。
暗黒を蝕む月光は部屋の中にまで差し込み、この場所の唯一の照明となっている。
僕はその光の中に蠢く影を見下ろしていた。
いつまでも見て飽きない、醜くて美しい僕のピアノ。
「ふぁっ……んっ…」
身を捩るたびに飾り付けた鎖が擦れて、音を成す。
僕は彼女をピアノと言った。
ピアノは乱暴な楽器だ。
ピンと張り詰めた線をひたすらに、叩いて痛め付ける。
それでも、ピアノは叩かれて啼く。
喜びを歌う。
悲しみを歌う。
怒りを歌う。
まさに今の彼女そのものだ。
変質的で淫らなカラダ。
酷くされて震え、鳴り響く。
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