この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
胡蝶の夢
第3章 深淵

黒崎直弥。
彼の言葉が僕の感情を逆撫でする。
僕の中でもう一人の醜い自分がぬらぬらと燻りだす。
僕がここから逃げてスケープゴートを降りたら…。
代わりに本来の生贄である妹が連れ出されるだろうか?
怒ったこの変態君主に御家取り潰しに合うだろうか?
妹?
家?
どうだっていい。
不要物の様に自分を吐き捨てた家など、絶えてしまえばいい。
僕を不幸にしたすべてなど、すべてすべて不幸になってしまえ…。
そう思って首を振る。
天使と悪魔の囁きとはよく言ったものだ。
呪いの様な言葉を吐き出す醜い悪魔の様な自分と、崇高な精神をひけらかす偽善者の自分が浮かんでは沈んでいく。
偽善者は切々と自己犠牲をすすめ、悪魔は自己愛のためにすべてを呪えと言う。
「イヤだ…」
どちらもイヤだ…。
.

