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胡蝶の夢
第4章  檻 




結局、この悪夢に出口などない。


希望さえも黒崎直弥という男の手の上に創られていた。


ぐしゃりと握りつぶす瞬間を楽しむためだけに創造される。



「さぁ、昨日の続きだ……」



腕が伸ばされる。


イヤだ。


放せ。


平和だった、むしろ退屈にさえ思っていたあの日々がまるで遠くに揺らめく蜃気楼の様だ。



「放せっ」



「口のききかたから教えようか?」



ぐふっ……


強烈な膝蹴りがみぞおちに入る。


蹲る暇もなく吊り上げられた。



「無力だな、無様で滑稽だ…」



そんなもの、自分が一番知っている。



「うるさいっ」



せめてもの抵抗と唾を吐く。


すると途端に黒崎の舌打ちと共に、首を殴打する掌が飛んできた。


おえっ……


ギリギリと締め上げられる。


僕はこれが一番嫌いだ。


身体中から力が抜けて、背中がぞくぞくして、頭の中が白くぼやけていく。


足りない酸素が僕の思考さえも支配していくようで嫌だ。


頭の中を掻き回されているみたい。




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