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胡蝶の夢
第6章 腐蝕
薄く膜の掛かった中から外を見ている様だった。
レースのカーテンよりも薄い白い膜。
自分というモノと外界の間に作った儚い線引き。
この中にいれば安心だ。
頼りのない薄っぺらな隔たりが、今は頑強な城壁にも勝った。
外の世界など捨ててしまえば良い。
何もかも諦めてしまえば良い。
そうすれば楽になれる。
誰かが僕を『虚無』に誘う。
僕は何故、ここにいる?
どうして僕なんだ。
体重を支える両の手首は悲鳴を上げ、足が接地点を探して彷徨う。
けれど床には届かず、足が揺れ、身体が揺れる度にまた手首が締め上げられる。
その繰り返し。
次こそは届きそうだ。
延々とループする期待と失望。
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