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社内の推しメン先輩は、なぜか私のことが好きらしい。
第2章 私は推しが好きすぎる
某月某日。
私の人生は今日、詰んだかもしれない。
「うそ……」
外は大雨、強風警報。
電車は止まり、最終バスは既になく。
頼りのビジネスホテルはどこも満室、満室、満室だらけの満室御礼オンパレード。おめでとうございます。
───こんなことってある?
「参ったなあ……今日は雨なんて予報は出てなかったはずだけど」
雨宿りの為に立ち寄った店の軒下。私は途方に暮れながら、闇夜に覆われた空を見上げる。大粒の雨が隙間なく降り落ちて、横殴りの強風に煽られて暴風雨と化していた。
視界は濃い雨で閉ざされて、荒れ狂うしずくが大地を激しく叩きつける。霧のように飛沫をあげて、パンプスやコートの裾を容赦なく濡らしていく。綺麗にセットしたはずの髪もぐしゃぐしゃに乱れ、店を出る前に身だしなみを整えたところで意味を成さなかった。
「本当だね……天気予報もあてにならないな」
篠突くような豪雨に意気消沈しているのは私だけじゃない。隣に佇むのは同じ営業部署で働く2つ上の先輩───松永 圭さんが、眉尻を下げながらポツリと愚痴を零した。そして私に向き直る。
「……ごめんね椎名さん。俺が無理に付き合わせたせいで、帰れなくなっちゃって」