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それが運命の恋ならば
第4章 闖入者
「…李人様…」
「…私はきっとひとを愛することができないのです。
…貴女のことも…酷く傷つけてばかりだ」
初めて聞く李人の…後悔にも似た言葉だった。

「…李人様は、私を憎んでいらっしゃるのですから、仕方がないことですわ…」
寂しく微笑む凪子に、痛みを堪えた表情を李人はした。
「…いや、私は…。
…そう…そうですね。
…私は貴女を憎んでいる…はずです。
貴女は私の母を傷つけた高遠氏の娘だから。
…母の仇を打ちたい。
そう少年の頃からずっと思ってきました。
だから貴女を憎み、貴女を苦しめたかった。
そうすれば、高遠氏への復讐が果たせると信じて来たからです」

…けれど…
李人は凪子の微かに湿り気を残す艶やかな黒髪を愛おしげに撫でる。
「貴女が他人に傷つけられるのは許せない。
間宮に殺意を覚えるほどに、許せなかった。
…私は…自分の気持ちが、分からない…」
深いため息を吐き、凪子を胸深くに抱き締めた。

「…李人様…」
…このひとは、まるで愛の迷い子だ…。
凪子はそう思った。
そうすると、李人への愛おしさと慈しみの感情が泉の如く湧き上がった。
凪子は、李人の背中にほっそりとした華奢な手を伸ばした。
引き締まった逞しい背中を、そっと抱き返す。
…すべての赦しと愛を与えるように…。
「…李人様が私を憎んでいらしても、私は李人様が好きです」

李人の身体がびくりと震えた。
「…貴女というひとは…」
再びその言葉を繰り返す。
…そうして…

「…愛と憎しみは、同じなのかもしれませんね…」
小さな呟きののち、凪子の口唇を優しく奪ったのだった…。

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