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それが運命の恋ならば
第4章 闖入者
ぼんやりと熱い湯に浸かり、のろのろと夜着に着替える。
…昼間のショックは漸く少しずつ薄らぎ始めていた。
離れは静かだ。
トキを始め、女中たちが近寄らないのは、恐らく李人が言い含めたのだろう。
禅も姿を見せないのは、間宮に因果を含め、送っているのかもしれない。
素足に板張りの床がひんやりと冷たい。
寝室の襖を開くと、縁側に李人の姿があった。
…藍色の紬姿…。
すらりとした美しい後ろ姿だった。
思わずぼんやりと立ち竦んでいると、気配を察した李人が振り返った。
凪子を見上げ、穏やかに微笑む。
「…温まりましたか…?」
「…はい…」
…こちらへいらっしゃい…。
李人が美しい手を差し伸べる。
おずおずと側に歩み寄る。
そのまま手を引かれ、李人の胸に抱き込まれた。
…強引ではない、まるで傷ついた凪子の心を癒すかのような優しい抱擁だった。
ややもして、李人が静かに口を開いた。
「…間宮の、言う通りかも知れない…」
「…李人様…?」
見上げるその瞳は、深い射干玉の夜のようだ。
…美しいけれど、どこまでも哀しく、胸が苦しくなるほどに寂しい色を帯びていた。
「…私には愛が分からないのです」
…昼間のショックは漸く少しずつ薄らぎ始めていた。
離れは静かだ。
トキを始め、女中たちが近寄らないのは、恐らく李人が言い含めたのだろう。
禅も姿を見せないのは、間宮に因果を含め、送っているのかもしれない。
素足に板張りの床がひんやりと冷たい。
寝室の襖を開くと、縁側に李人の姿があった。
…藍色の紬姿…。
すらりとした美しい後ろ姿だった。
思わずぼんやりと立ち竦んでいると、気配を察した李人が振り返った。
凪子を見上げ、穏やかに微笑む。
「…温まりましたか…?」
「…はい…」
…こちらへいらっしゃい…。
李人が美しい手を差し伸べる。
おずおずと側に歩み寄る。
そのまま手を引かれ、李人の胸に抱き込まれた。
…強引ではない、まるで傷ついた凪子の心を癒すかのような優しい抱擁だった。
ややもして、李人が静かに口を開いた。
「…間宮の、言う通りかも知れない…」
「…李人様…?」
見上げるその瞳は、深い射干玉の夜のようだ。
…美しいけれど、どこまでも哀しく、胸が苦しくなるほどに寂しい色を帯びていた。
「…私には愛が分からないのです」