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それが運命の恋ならば
第5章 真実の口
それから、凪子の家庭教師は李人が務めることになった。
申し出を聞いた凪子は慌てて断った。
「そんな…!お忙しい李人様に、そんなことをお願いするわけには…」

けれど李人は淡々と答えた。
「私が良いと言っているのですから、良いのです。
…そのかわり平日の午前中の2時間だけになりますが、よろしいですか?」
ホテルや旅館を経営している李人は土日祝日が特に忙しいらしい。
平日もチェックインの午後は多忙なのだ。

「はい。もちろんです」
…それから…と、李人は付け加えた。
「母屋の私の書斎でお勉強しましょう。
あの部屋なら安全ですから」
「…李人様…」
…もう間宮が来ることなど決してないはずなのに…と、凪子は驚きながらも、李人の気持ちが嬉しくて、胸が一杯になる。

「…ありがとうございます…」
李人の切長の美しい瞳を見つめながら、心を込めて礼を告げる。

李人は少し照れたようにすっと視線を外し…
「…では、出勤します」
さっさと立ち上がり、玄関に向かった。

そのすらりと美しい背中に、
「行ってらっしゃいませ。
お帰りを…お待ちしています」
小さいけれどはっきりした言葉を投げかける。

…李人は立ち止まり、ゆっくり振り返るとほんの少しだけ微笑んでみせた。
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