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それが運命の恋ならば
第5章 真実の口
「…母さん…」
禅が戸惑うように声を掛けた。

凪子は思わず禅の母、いとの前に歩み寄った。
「…あの…。
いとさんは、高遠様のことをご存知なのですか…?」
…この家では禁句とも言えるその名を、禅の母親の口から聞いた衝撃…。
だから尋ねてしまったのだ。
このひとは、何か知っているのかもしれない…と。

いとはしみじみとした懐かしいような表情すら浮かべ、頷いた。
「…はい。よく存じております…。
…そのお目元や高貴な雰囲気…。
…やはり血は争えませんね…」

まだ見ぬ父親に、よく似ていると言われた嬉しさに胸が一杯になる。
「…まあ…」

そんな凪子を優しく見つめ…やがて、禅の方へと向き直った。

「…禅。
凪子様と二人きりにしてもらえませんか。
…どうしてもお聞きしたいことがあるのです」

それは、柔らかな物言いの中に、強い意志を秘めた言葉であった。
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