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それが運命の恋ならば
第5章 真実の口
禅の計らいで、凪子といとはキッチンガーデンの裏手にある小さな東屋の中で向かい合っていた。
…ここなら、披露宴会場の中庭からは離れているので、人目につく心配はなかった。
いとは、どこか禅を彷彿させる思慮深い中にも温かさを湛えた眼差しで、凪子をじっと見つめた。
「…凪子様、端的に伺います。
…貴女様は、李人様から高遠様のことを何とお聞きになっておられますか?」
「…いとさん…」
「…実は禅から聞いて驚いたのです。
李人様が高遠様のお嬢様をわざわざ探し当て、奥様にお迎えになったと…。
…しかも、それは…」
いとが言葉を詰まらせた。
痛ましいような表情が顕であった。
だから、凪子は自分から口を開いた。
「…はい。
李人様は高遠様に復讐なさるために私をお嫁様になさったのです。
李人様からはっきりと言われました」
「…やはり…!」
苦しげに、いとは首を振った。
「禅から聞いて、そうではないかと危惧していました。
やはり、李人様は高遠様のことを未だに恨んでおられるのですね。
それで凪子様にも同じ恨みをぶつけられるなんて…」
…なんてこと…!
いとは深いため息を吐いた。
「…でも…高遠様は、それだけのことをなさったのだと思います。
…李人様のお母様に…」
…それ以上は、とても凪子の口からは言えなかった。
自分の父親がしでかしたあまりにも残酷な罪…。
それを口にすることは凪子にはできなかったのだ。
いとは暫くは無言だった。
やがて、凪子の手を取ると強く握りしめ、噛み締めるように伝えたのだ。
「…凪子様。私は真実を申し上げなくてはなりません。
誰よりもまず、李人様に…」
…ここなら、披露宴会場の中庭からは離れているので、人目につく心配はなかった。
いとは、どこか禅を彷彿させる思慮深い中にも温かさを湛えた眼差しで、凪子をじっと見つめた。
「…凪子様、端的に伺います。
…貴女様は、李人様から高遠様のことを何とお聞きになっておられますか?」
「…いとさん…」
「…実は禅から聞いて驚いたのです。
李人様が高遠様のお嬢様をわざわざ探し当て、奥様にお迎えになったと…。
…しかも、それは…」
いとが言葉を詰まらせた。
痛ましいような表情が顕であった。
だから、凪子は自分から口を開いた。
「…はい。
李人様は高遠様に復讐なさるために私をお嫁様になさったのです。
李人様からはっきりと言われました」
「…やはり…!」
苦しげに、いとは首を振った。
「禅から聞いて、そうではないかと危惧していました。
やはり、李人様は高遠様のことを未だに恨んでおられるのですね。
それで凪子様にも同じ恨みをぶつけられるなんて…」
…なんてこと…!
いとは深いため息を吐いた。
「…でも…高遠様は、それだけのことをなさったのだと思います。
…李人様のお母様に…」
…それ以上は、とても凪子の口からは言えなかった。
自分の父親がしでかしたあまりにも残酷な罪…。
それを口にすることは凪子にはできなかったのだ。
いとは暫くは無言だった。
やがて、凪子の手を取ると強く握りしめ、噛み締めるように伝えたのだ。
「…凪子様。私は真実を申し上げなくてはなりません。
誰よりもまず、李人様に…」