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それが運命の恋ならば
第7章 その薔薇の名前は
「…どうしました?凪子さん」
千晴の声にはっと我に還る。
千晴が心配そうに凪子の貌を覗き込んでいた。

「いいえ、なんでも…」
と言いかけ…少し考えたのち、思い切って尋ねてみる。

「…あの…。
お聴きしても良いですか?」

「何でも聴いてください」
千晴は輝くような笑顔を見せた。
その温かな笑みに力を得て、おずおずと口を開く。

「…あの…。
千晴様は、今も紫織さんと言う方をずっと愛していらっしゃるとお聞きしました」

千晴の美しい琥珀色の瞳が驚いたように見開かれた。

「…千晴様の初恋の方なのでしょう?
…どのような方なのですか…?」
律は魔女と評していた。
…本当にそのようなひとなのだろうか…。

ふっと、その瞳が見たこともないような切なげな色に染まる。
形の良い口唇が、優しい弧を描く。

「…そう…。
そうですね…。
紫織さんは、私の見果てぬ夢…」

そうして温室の最奥に咲く、ひんやりと仄白くも艶やかな白い薔薇を振り返る。

やがて愛を告げるように、囁いた。

「…永遠に叶わぬ、恋なのです…」



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