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それが運命の恋ならば
第7章 その薔薇の名前は
千晴はやや自嘲気味に笑った。
「…泰彦叔父様も、呆れているでしょうね。
いつまでも初恋に囚われている愚かな私を…」

「いいえ、そんな…」
…初恋に囚われる気持ちは、誰よりもわかる。

「…お気持ちはとてもわかりますわ…」
…私だって…。
あの冷たくも美しい夫だったひとを、いつまでも忘れられない…。

俯く凪子にしなやかに手を差し出すと、千晴は温室の中を優雅にエスコートする。
まるでワルツに誘うかのように、千晴は凪子の手を取り滑らかにリードする。

温かな温室の空気の中、薔薇の馨しい薫りが濃厚に纏わりつく。

…導かれた先は、仄白く美しい白薔薇の前だ。

「…ガブリエルという薔薇です」

凪子は思わず眼を見張った。
「綺麗ですわ。
ため息が出るほどに…」

「…紫織さんはこの薔薇のような方でした。
初めて会ったとき、魂が震えるとはまさにこのことかと思いました」

千晴の美しい指が、愛おしいげにその薔薇にそっと触れる。

…まるで、かのひとに触れるかのように…。





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