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それが運命の恋ならば
第7章 その薔薇の名前は
「…紫織さんは私の家庭教師をしてくれていた親戚の青年の婚約者でした…。
ある日、彼は私に紫織さんを紹介するために彼女とともに屋敷を訪れたのです。
…私は…彼女を一目見るなり、恋に堕ちました…」
…美しい白薔薇に、愛の告白をするかのように語りかける。
「私はまだ十四歳でした。
けれど、いきなり足元を掬われたかのように、取り返しのつかない恋に堕ちた予感に襲われて…胸が苦しくなりました…」
…切ないまでに純粋な、そして切ない言葉…。
少年の千晴の、一途な気持ちが凪子に伝わってくる。
…だから…
「聞かせてください。
千晴さんの恋のお話を…」
そう乞うたのだ。
千晴は驚いたように美しい琥珀色の瞳を瞬き、微かに微笑んだ。
「…楽しい話ではありませんよ。
凪子さんは私に幻滅なさるかもしれない」
凪子は首を振った。
「構いませんわ。
…私…千晴さんと紫織さんのお話を、聞かなくてはならないと思うのです」
…自分のためにも…。
「…分かりました。
お話しましょう」
凪子を籐の長椅子に座らせ、千晴はゆっくりと記憶を手繰り寄せるかのように語り始めた。
「…あの日も…そうだった…。
薔薇が美しい、六月のことでした…」
ある日、彼は私に紫織さんを紹介するために彼女とともに屋敷を訪れたのです。
…私は…彼女を一目見るなり、恋に堕ちました…」
…美しい白薔薇に、愛の告白をするかのように語りかける。
「私はまだ十四歳でした。
けれど、いきなり足元を掬われたかのように、取り返しのつかない恋に堕ちた予感に襲われて…胸が苦しくなりました…」
…切ないまでに純粋な、そして切ない言葉…。
少年の千晴の、一途な気持ちが凪子に伝わってくる。
…だから…
「聞かせてください。
千晴さんの恋のお話を…」
そう乞うたのだ。
千晴は驚いたように美しい琥珀色の瞳を瞬き、微かに微笑んだ。
「…楽しい話ではありませんよ。
凪子さんは私に幻滅なさるかもしれない」
凪子は首を振った。
「構いませんわ。
…私…千晴さんと紫織さんのお話を、聞かなくてはならないと思うのです」
…自分のためにも…。
「…分かりました。
お話しましょう」
凪子を籐の長椅子に座らせ、千晴はゆっくりと記憶を手繰り寄せるかのように語り始めた。
「…あの日も…そうだった…。
薔薇が美しい、六月のことでした…」