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それが運命の恋ならば
第9章 その薔薇の名前は 〜ローズガーデンの恋人たち〜
「…それからは、お会いしてもはぐらかされてばかりです。
紫織さんは、相変わらず色恋沙汰の噂の絶えない方で…。
愛人や恋人の影は数え切れない。
紫織さんを巡って刃傷沙汰の事件が起こるほどです…。
一族の中ではゴシップの女王とまで囁かれました。
…まだ大人になりたての私はくよくよ悩みました。
紫織さんの気持ちがわからなくて…」

長い告白を終え、千晴はため息を吐いた。
…今もずっと分からない…。
そう苦しげに呟いた。

「でも…千晴様は紫織さんを愛していらっしゃるのでしょう?
今までずっと…」

おずおずと尋ねる凪子に、やや弱々しい笑みをその端麗な貌に浮かべる。

「…ええ。
愛していました。
…けれど、最近は…よく分からなくなってきました…。
紫織さんの気持ちはもとより、自分の気持ちも…。
…というか…少々疲れてきたのです。
報われない恋をいつまでも追いかけるのに…」

…そうして、ゆっくりと傍らの凪子を美しい琥珀色の瞳でじっと見つめた。

「…私も、そろそろ新しい恋に踏み出すべきなのかもしれません…」

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