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それが運命の恋ならば
第9章 その薔薇の名前は 〜ローズガーデンの恋人たち〜
「…千晴様…」
千晴は凪子の白く華奢な手を引き寄せる。
凪子はびくりと指先を震わせた。
構わずその柔らかな小さな手を握りしめる。
「貴女は私によく似ている」
「…え?」
「愛する人に報われぬ愛を捧げている。
叶わぬ恋に、身も心も焦がしながら…」
「…千晴様…」
凪子の脳裏に李人の面影が浮かんだ。
報われぬ愛…。
確かにその通りだ。
凪子は寂し気に微笑む。

千晴の宝石のような瞳が近づく。
「…だから凪子さんに会うと安心感に包まれるのです。
貴女は私だ…。
今まで、一緒に居てこんなにも心穏やかになる女性に、私は初めて出会いました」

…それに…
と甘く囁く。

「貴女はとても美しい…。
可憐で清楚で…触れれば傷付きそうな繊細な白い花のようだ…。
私は貴女にすっかり魅せられてしまいました…」

千晴の形の良い唇が寄せられ、凪子は身を硬くする。

…ふっと優しく微笑むと、そのまま凪子の白い額にキスを落とした。
それは紳士のキスだった。

「…来週の土曜日、我が家でガーデンパーティーを催します。
ちょうど薔薇が見頃です。
そして、凪子さんのプレお披露目をいたしましょう。
泰彦叔父様に頼まれていたのですよ。
貴女に一族の人々と対面をしていただき、他の世界にも触れていただけるように…と。
…近しい親戚と私の大学の同級生や後輩など気の置けないメンバーばかりですから、どうぞお気兼ねなく」

千晴は輝くような美貌を綻ばせた。

「…貴女にドレスを贈りましょう…。
上質な真珠の首飾りも…。
拝見するのがとても楽しみです」
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