この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
それが運命の恋ならば
第1章 出逢い
「おめでとう」
長い廊下をトキに手を取られ歩き出す背後から、声が掛けられた。
振り返ると、そこには柱にもたれ掛かる桃馬がいた。
式の最中は退屈そうに欠伸をして、トキに睨まれていたのだが、凪子と眼が合うと、にこにこと手を振って寄越した。
…金髪とピアスは相変わらずだが、神妙に黒紋付きに袴の正装姿だ。
李人によく似た端正な容姿とスタイルなので、若いながらよく似合っている。
「…桃馬様…」
桃馬が吹き出す。
「様はいらねえよ。
とーまくんでも、とーまちゃんでもいいよ。凪子ちゃん」
凪子は思わずくすりと笑った。
…今までの張り詰めた緊張感が、ふわりと和らいでゆく。
「…桃馬…さん。
ありがとうございます。
これからどうぞよろしくお願いいたします」
頭を下げる凪子を桃馬は眩しげに見つめた。
「凪子ちゃん、やっぱめっちゃ綺麗だな。
兄貴にはもったいないよ。
…だってさ…」
やや腹立たしげに続けようとするのに
「桃馬様」
トキの静かだが、鋭い声が諌めるように響いた。
桃馬はふっと諦めたように肩を竦めた。
「…ま、いいや。
俺にはカンケ〜ねえし」
…でも…
と、今までの軽薄な表情を改め、真摯な眼差しで凪子を見つめた。
「…マジで困った時は俺になんでも話してよね、凪子ちゃん」
意外なほどに親身な言葉に、凪子は驚いた。
「…あの…」
尋ねようとすると、やんわりと…けれど有無を言わせぬ調子でトキに手を引かれた。
「さあ、凪子様。お召し替えをなさらなければ。
…李人様がお待ちです」
「は、はい…」
振り返った先に、もう桃馬はいなかった。
長い廊下をトキに手を取られ歩き出す背後から、声が掛けられた。
振り返ると、そこには柱にもたれ掛かる桃馬がいた。
式の最中は退屈そうに欠伸をして、トキに睨まれていたのだが、凪子と眼が合うと、にこにこと手を振って寄越した。
…金髪とピアスは相変わらずだが、神妙に黒紋付きに袴の正装姿だ。
李人によく似た端正な容姿とスタイルなので、若いながらよく似合っている。
「…桃馬様…」
桃馬が吹き出す。
「様はいらねえよ。
とーまくんでも、とーまちゃんでもいいよ。凪子ちゃん」
凪子は思わずくすりと笑った。
…今までの張り詰めた緊張感が、ふわりと和らいでゆく。
「…桃馬…さん。
ありがとうございます。
これからどうぞよろしくお願いいたします」
頭を下げる凪子を桃馬は眩しげに見つめた。
「凪子ちゃん、やっぱめっちゃ綺麗だな。
兄貴にはもったいないよ。
…だってさ…」
やや腹立たしげに続けようとするのに
「桃馬様」
トキの静かだが、鋭い声が諌めるように響いた。
桃馬はふっと諦めたように肩を竦めた。
「…ま、いいや。
俺にはカンケ〜ねえし」
…でも…
と、今までの軽薄な表情を改め、真摯な眼差しで凪子を見つめた。
「…マジで困った時は俺になんでも話してよね、凪子ちゃん」
意外なほどに親身な言葉に、凪子は驚いた。
「…あの…」
尋ねようとすると、やんわりと…けれど有無を言わせぬ調子でトキに手を引かれた。
「さあ、凪子様。お召し替えをなさらなければ。
…李人様がお待ちです」
「は、はい…」
振り返った先に、もう桃馬はいなかった。