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それが運命の恋ならば
第11章 ふたつの月
「禅さん…」
禅がゆっくりと凪子の前まで歩み寄る。
暗闇の中、男の薄荷のような森の薫りがふわりと漂う。
「…奥様は誰よりも旦那様を愛しておられます。
もちろん、旦那様も…。
お二人は深く愛し合っておられる…。
それは重々承知しております」
…けれど私は…
男の熱く鋭い眼差しが、凪子を射抜くように見つめる。
「やはり貴女を愛さずにはいられない。
貴女は私が生まれて初めて本当に愛したひとだ…。
その貴女を、どうして忘れることができるでしょうか」
凪子は息を呑んだ。
「禅さん…!」
禅の深い夜の海の色の瞳が、熱情の色を帯びる。
「貴女にご迷惑はお掛けいたしません。
ですから、貴女を密かに思い続けることを、どうかお許しください」
「禅さん…いけませんわ…そんなこと…」
凪子は激しく動揺した。
…そんなことを言われたら…
…私は…
凪子が震える口唇を開きかけたその時…
「…凪子…凪子…どこにいるの?」
母屋の方から、凪子を探す李人の声が響いてきた。
禅がゆっくりと凪子の前まで歩み寄る。
暗闇の中、男の薄荷のような森の薫りがふわりと漂う。
「…奥様は誰よりも旦那様を愛しておられます。
もちろん、旦那様も…。
お二人は深く愛し合っておられる…。
それは重々承知しております」
…けれど私は…
男の熱く鋭い眼差しが、凪子を射抜くように見つめる。
「やはり貴女を愛さずにはいられない。
貴女は私が生まれて初めて本当に愛したひとだ…。
その貴女を、どうして忘れることができるでしょうか」
凪子は息を呑んだ。
「禅さん…!」
禅の深い夜の海の色の瞳が、熱情の色を帯びる。
「貴女にご迷惑はお掛けいたしません。
ですから、貴女を密かに思い続けることを、どうかお許しください」
「禅さん…いけませんわ…そんなこと…」
凪子は激しく動揺した。
…そんなことを言われたら…
…私は…
凪子が震える口唇を開きかけたその時…
「…凪子…凪子…どこにいるの?」
母屋の方から、凪子を探す李人の声が響いてきた。