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それが運命の恋ならば
第11章 ふたつの月
「…お詫び…?」
禅の凛々しい眉が顰められる。
熱い眼差しから逃れようと、凪子は長い睫毛を震わせ、伏し眼にする。

…言わなくてはならない…。
これから、私はここで、李人様の妻として、李人様だけを愛して生きていくのだから…。

「はい…。
…私…この間…貴方と…ここで…」

…キスをしてしまった…。

あの衝撃の出来事は、やはり口に出せなかった。
けれど、彼を見ずにはいられない。
いや、彼の眼を見て告げなくてはならないのだ。

凪子は恐る恐る禅を見上げる。

「…私…私は…貴方を…」

…愛しては、いけないのだ…。

禅の強い熱情を秘めた眼差しが、ふっと弱まり…代わりに静かな優しさを纏いだす。

禅の男らしく引き結ばれた口唇が、ゆっくりと開かれる。

「…そのことですか…。
…奥様、どうかお気に病まれないでください」

禅は穏やかに微笑む。
凪子をみつめる表情は、気弱な幼な子を慰めるそれだ。

「…貴女様はあの時、旦那様とお別れなさらなくてはならず動揺されていたのです。
悲しみ、混乱されていた貴女の心に、私が付け込んだ…。
…お詫びしなくてはならないのは、私の方です」






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