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それが運命の恋ならば
第11章 ふたつの月
…その夜半、凪子は入浴を済ませ、トキの介添えで白い夜着に着替えた。
トキは凪子に丁寧に薄化粧を施すと静かに去り、寝室には凪子だけが残された。

部屋に薫きしめられた伽羅の薫りが、凪子を微かに緊張させる。
その床しい薫りとともに、遠い記憶が蘇るのだ。

…まるで、あの初夜のようだ…。

あの近いような遠い日の夜を、ぼんやりと思い出す。

…あの夜は…まるで遊郭の遊女のような紅い襦袢に着替えさせられた。
そして、李人が現れ…

…それから…

…それから…

悪夢のような爛れた狂瀾の一夜が始まったのだ。

凪子は無意識に首を振る。
禍々しくも仇めいた夜の記憶を振り払うように。

…いいえ。
もう、大丈夫よ。
今の李人様は、あの日の李人様ではないわ…。

自分に言い聞かせたその時…

…静かに寝室の襖が開いた。





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