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それが運命の恋ならば
第11章 ふたつの月
「小学生で寄宿舎に?
随分思い切りましたね。僕は中等部からだったから…」
感心したような李人の言葉に、澄佳は頷く。
「…ええ。とても悩みました。
類は何よりも大切な私の宝物ですから…。
平日だけとはいえ、離れて暮らすのは本当に寂しくて寂しくて…」
…でも…。

澄佳は凛とした口調で続けた。
「…類には主人のような立派な大人になって欲しいんです」

「澄佳さんのご主人…?」
「…ええ。
主人のように聡明で、思慮深く、教養深く…。
…何より、視野の広いひとになって欲しいんです」
そう語る澄佳の美しい瞳はきらきらと輝いていた。
…まるで目の前に愛おしい夫がいるかのような熱っぽさだ。

「だから、主人の母校に進ませることに決めました。
…主人は東京の大学で教鞭を取っております。
自宅は東京にあります。
ですから平日は私と主人、類は離れ離れなんです」
…これほど愛している夫とまだ幼い子どもと離れて暮らすことは、彼女には相当の決意に違いない。

「…週末婚…という形式ですか?
…失礼ですが、なぜそこまでして澄佳さんはこちらにいらっしゃるのですか?」
夫は大学教授であろう。
東京に自宅があり、子どもを寄宿制の私学に行かせるほどだ。
裕福な暮らしに違いない。
澄佳がどうしてもこちらで働かなくてはならない理由はないはずだ。

「…この店を、続けたいんです。
この店は、私の人生そのものだからです」
穏やかに微笑みながら、けれどその言葉には毅然とした強さがあった。

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