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それが運命の恋ならば
第12章 それが運命の恋ならば
桃馬は庭に足を踏み入れた。
…庭園の薔薇たちは、初夏の風に優しく揺れていた。
高いパーゴラに這うのは、ポールズヒマラヤンムスク…。
淡いピンクの小花を無数に咲かせ、枝を伸び伸びと伸ばしている。
庭園の入り口にはピエール・ドゥー・ロンサール、セント・セシリア…。
特にセント・セシリアのミルラの薫りが客人を招くように魅了していた。

風とともに芳しいダマスクローズやティーローズの薫りも辺りにふわりと広がる。
庭の薔薇の名前を、桃馬はすべては知らない。
分かるのは、さながら華やかな夢のような薔薇庭園…ということだけだ。

…一年をかけて、屋敷の日本庭園を西洋庭園にすべて作り変えたのは禅だ。
命じたのは兄の李人だった。
『美しいローズガーデンを作って凪子を喜ばせたい。
…美しいものを見て触れることは、胎教に良いだろうからね。
凪子のマタニティブルーの予防と…美しい子どもが生まれるように…』
そう臆面もなく言ったのだ。

禅は英国のガーデナー養成専門学校で学び、ヨーク地方のマナーハウスに住み込みで働き、実地で修業していた。
だから、庭を英国式庭園に作り替えることなど、お手のものだった。

『…奥様が喜んでくださるなら、どのような庭でも作ってみせます。
…健やかでお美しいお子様がお生まれになりますように…』
そう静かに告げると、密やかに凪子と見つめ合い、微笑んでいた。

禅の庭は評判で、最近では薔薇愛好家からの見学の申し出が殺到しているほどだ。
ガーデナーの雑誌にも掲載された。

…今日はお祝いの宴だから殊更美しく、様々な薔薇が家のそこかしこに飾り付けされている。

屋敷の中は既にお祝いムード一色だ。
厨房は朝から大騒ぎだし、使用人たちは慌ただしく立ち働いている。
ガーデンパーティー会場のここは既にテーブルやソファ、麻の布のテントの用意も万全だ。
庭に運び出されたピアノの前には、ピアニストも楽譜の準備をしている。
…気の早い招待客がちらほらと庭の薔薇を眺めている姿も見受けられた。

けれど桃馬は、なんとなく面白くなかった。
それで、うろうろと歩き回っていたのだ。

…と…

「ちょっと、桃ちゃん!
な〜に仏頂面してんのよ。
今日は赤ちゃんのお披露目のお祝いだっていうのに。
桃おじちゃん!ちょっとはニコニコしなさいよお」
芝居がかった声が背後から飛んだ。

「ケンちゃん!」


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