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それが運命の恋ならば
第12章 それが運命の恋ならば
「…いやらしい色だ…。
君の淫らな肉の色は…。
甘い蜜を滴らせ…締めつけ…男を虜にする…。
…罪深い…名器だ…。
…ああ…禅…。
お前も…また大きくなったね…」
うっとりしたような、李人の声…。
「…はい…旦那様…」
禅の低い声が、甘く掠れる。

李人が静かにふたりに告げる。
「…僕は幸せだ…。
…愛する凪子と、お前と、三人で愛し合えて…。
…凪子…。
君のおかげだ…。
君が僕たちを救ってくれたのだ。
…ああ…凪子…。
…僕たちの子どもを孕んでくれ…。
…このまま…」
その言葉が合図だったかのように、男たちの律動が激しくなる。

凪子は、二人の逞しい男に前後から攻めたてられる。
その華奢なシルエットは、今にも無残に砕け散りそうだ。

「…ああ…っ…そん…な…む…り…。
…こわれ…る…こわれて…しま…う…」
か細い悲鳴をあげる凪子を、禅は背後から優しく抱きすくめる。
「…奥様…。
大切な貴女を壊しはしない…。
…貴女は…私たちに愛されて…もっと…もっと…お美しく…艶やかになられるのです…。
…そうして…私たちの…愛の結晶を…お産みください…。
…私は、生涯を懸けて、奥様と旦那様とお子様をお守りいたします」

「…ああ…禅…さ…ん…」
感激の涙が、凪子の大きな瞳から溢れ落ちる。

…禅は、凪子の密かな夫であり、彼女を守る騎士であり、そして李人を守る忠実な従者であるのだ。

禅は恐らく、一生涯、表舞台には現れることはないだろう。
禅と凪子が公に寄り添い、愛を語らうことはない。
禅が凪子を抱き、愛を語れるのは、この寝室…この褥の上だけ。
…そして、李人が立ち会うときだけなのだ。
それは多分禅の希望なのだろう。

二人の美しい男が、光と影となり、凪子を愛し、奪い…そして崇めているのだ。
…凪子が服従し、征服されているのではない。
その美しい姿と清らかな魂で、二人の夫を魅了し、永遠に服従させ、征服しているのは、凪子なのだ。

…だからこそ、その姿は神々しいまでに美しく、麗しく、妖艶なのだ…。

…なんて…なんて関係なんだ…。
桃馬は、言葉にできない複雑な、熱い感情が溢れ出し、堪え切るのに精一杯だった。

…そして、悟るのだ。

…兄さんたちは、淫らで、いびつで、不道徳で、背徳的で…けれど、だからこそ、奇跡的に美しく、夜に煌めく稀有な宝石のような関係を手に入れたのだ…。




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