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それが運命の恋ならば
第4章 闖入者
「初めまして。
間宮広樹と申します。
凪子さんの家庭教師に抜擢されて光栄です」
青年は折り目正しく、快活に凪子に挨拶をした。
…やや明るい髪色をした整った貌立ちの青年だ。
服装も仕立ての良い凪子には分からないがブランド物らしい鳩羽色のジャケットにシャツ…と言った洒落た格好だが、その雰囲気はどこか軽い…というか、やや遊び人めいたものだ。
挨拶とともに差し出された手に、戸惑いつつも凪子はおずおずと白い手を差し伸べた。
「…こちらこそ、どうぞよろしくお願いいたします」
握手されるのかと思った手に、青年は軽く口づけた。
…もちろん敬愛を表す手の甲へのキスだったが。
びくりと震えた凪子に気を留める様子もなく、間宮はにこにこと笑った。
「一之瀬先輩の奥様が、こんなにお美しくて可憐な方だったとは…。
まだお若くていらっしゃるし…。
先輩も隅に置けませんね」
軽口を叩く間宮に李人は一笑し、穏やかに説明を続けた。
「間宮くんは私の大学のゼミの後輩です。
帰国子女で幼少期はパリで育ったそうです。
凪子さんはフランス語を習いたがっていらしたから、うってつけだと思いましてね」
間宮は芝居がかった様子で両手を広げた。
「ああ、なんてお優しい旦那様だ!
日本の男性は未だに妻が勉学することを面白く思わない人が多いのに。
フェミニストで紳士で寛容で…さすがは一之瀬先輩だ。
…僕は来年またフランスに戻る予定なんです。
父親がパリで古美術商をしていましてね。その仕事を手伝うのですが…」
人好きのする瞳を細めて悪戯っぽくウィンクをし、付け加えた。
「…それまで僕で良かったらフランス語やフランスのことをたくさん教えて差し上げましょう。
…美しい奥様のために…」
間宮広樹と申します。
凪子さんの家庭教師に抜擢されて光栄です」
青年は折り目正しく、快活に凪子に挨拶をした。
…やや明るい髪色をした整った貌立ちの青年だ。
服装も仕立ての良い凪子には分からないがブランド物らしい鳩羽色のジャケットにシャツ…と言った洒落た格好だが、その雰囲気はどこか軽い…というか、やや遊び人めいたものだ。
挨拶とともに差し出された手に、戸惑いつつも凪子はおずおずと白い手を差し伸べた。
「…こちらこそ、どうぞよろしくお願いいたします」
握手されるのかと思った手に、青年は軽く口づけた。
…もちろん敬愛を表す手の甲へのキスだったが。
びくりと震えた凪子に気を留める様子もなく、間宮はにこにこと笑った。
「一之瀬先輩の奥様が、こんなにお美しくて可憐な方だったとは…。
まだお若くていらっしゃるし…。
先輩も隅に置けませんね」
軽口を叩く間宮に李人は一笑し、穏やかに説明を続けた。
「間宮くんは私の大学のゼミの後輩です。
帰国子女で幼少期はパリで育ったそうです。
凪子さんはフランス語を習いたがっていらしたから、うってつけだと思いましてね」
間宮は芝居がかった様子で両手を広げた。
「ああ、なんてお優しい旦那様だ!
日本の男性は未だに妻が勉学することを面白く思わない人が多いのに。
フェミニストで紳士で寛容で…さすがは一之瀬先輩だ。
…僕は来年またフランスに戻る予定なんです。
父親がパリで古美術商をしていましてね。その仕事を手伝うのですが…」
人好きのする瞳を細めて悪戯っぽくウィンクをし、付け加えた。
「…それまで僕で良かったらフランス語やフランスのことをたくさん教えて差し上げましょう。
…美しい奥様のために…」