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秘匿の闇市〜Midnight〜
第5章 禁じられた二人
他にも美影は、館を出る時に亜子がねだっていたベビーカステラを買い込んだ。佳子の家政婦らの間で人気らしい、縁日ならではのスイーツは、焼きたてが一番美味しいからと、あさひはつまみ食いの誘惑を受ける。
「はい、あーん」
「あー……」
熱々の、見た目よりもちもち食感のカステラは、人気があるのも頷ける。
三ヶ月前まで、甘い物を口にするのが怖かった。育江に厳しく禁じられていただけに、腹に入れれば醜くなるか、病気になるかと思っていたのに、実際は何も変わらなかったし、体調などは改善さえした。栄養不足だったのではないか、最近、あさひは家政婦達からそんな指摘を受けたこともある。
館に戻ると、框に見覚えのない靴があった。見るからに男物の革靴は、佳子の客にしては珍しい。
初詣に行くのに二人一組になったのは、全員が出かけてしまうと、こうした場合の対応が出来なくなるからだ。つまり、おそらく客室かどこかの部屋で、この靴の主はしかるべきもてなしを受けている。
「あんまり出て行くと、先方が気遣っちゃうしね。リビング、戻ろうか」
「ですね。お土産も冷めない内に……」
その時だ。
「水臭いこと言わないで、佳子さん、新しいご家族見せて下さいよ。特に僕は、動物好きなんですから」