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秘匿の闇市〜Midnight〜
第5章 禁じられた二人
「なんかごめん、相手、私で」
「いいえっ、そんなことないです」
「そう?あさひちゃん、お詫びに何でも答えるよ。彩月の好きな映画や音楽くらいなら、情報提供出来るから」
「──……」
そこまで顔に出ていた自覚はない。
いや、美影にとっては、きっと取るに足りない問題だ。佳子のペットが一方的に世話係の家政婦に懐いたところで、何の損害も生じない。何も変わらない。
実際、美影は今も、屋台や周りの女達の晴れ着姿に感想を述べることの方が、重要そうだ。
本当は、知りたい。
あの婦人会の翌日、彩月の様子がいつもと違った。それはあさひの思い過ごしかも知れないし、女達の噂話が、あさひにそうした印象を植えつけた可能性もある。
時折、佳子と彩月が身内のように砕けた間柄に見えるのも、きっとあさひの立場があまりに違うからだ。
「あさひちゃん、そっち取りやすいんじゃない?」
「こっちですか?あっ、……うーぅ、えいっ」
本殿から降りる途中、ヨーヨー掬いで生まれて初めて、あさひは水風船を自力で釣った。天然石の店にも立ち寄った。美影があさひにネックレスやイヤリングを合わせては、あれも似合うこれも似合うと褒めちぎった末、彼女が購入したのは圭への土産だ。
「あの子、アクアマリンのブレスレット欲しがってたから。あさひちゃんは、何となく。私がアクセ贈ったら、怒る人が出そうだし」