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秘匿の闇市〜Midnight〜
第5章 禁じられた二人
* * * * * * *
彩月の父親の訪問がきっかけではなかったにせよ、あれから佳子は何か思い出した様子で、あさひを呼んだ。
育江から連絡が入ったらしい。志乃達が出張から戻っており、あさひが年末年始に一度も帰宅しないことを不審がっている。加えて別居していた父親も、例年通り、娘に会いたがっているという。
かくて三が日が明けて最初の月曜日、あさひは三ヶ月振りの帰路に着いた。
何度かの外出を通して、あさひはおおむね地図で示せるほどには、佳子の館がどの辺りかを把握していた。それでも通学路や行きつけだった書店、最寄駅に近づくと、故郷に帰った気分になる。
最後に育江と出かけた公園も、三ヶ月前から姿を変えていなかった。いや、小学校低学年くらいの子供達が凧を揚げたり、晴れ着姿の二人連れが犬の散歩をしているところからして、本当にここだったろうかと、あさひは自分の記憶を疑う。
「彩月さんは、ご存じでしたか?深夜のフリーマーケット」
「小松原さんに聞いていなければ、知る機会はなかったな」
「じゃあ、ここで行われていたって聞いて、信じられますか?」
「見るからに怪しい公園だったら、捜索入ってたかもね。あさひがここにいるのが、何よりの証拠じゃん」
なるほどその通りだ。あのフリーマーケットが現実に存在していたからこそ、今、あさひは彩月と一緒にいる。
あさひに休暇を与えた佳子は、代わりに彩月の同伴を命じた。
高額なペットが逃げないよう、目付け役だ。
改まって願わなくても、もしかすれば、抑えきれない想いは叶うのではないか。…………
そんなことを考えている内に、純和風の懐かしい家構えが見えてきた。