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秘匿の闇市〜Midnight〜
第5章 禁じられた二人
長期間の外泊から戻ったあさひに、志乃も剛志も安堵の涙を滲ませただけで、詮索したりはしなかった。
あさひに関する決定権は、全て育江が握っている。強く口を出せる者はいない。
志乃ら夫婦が彩月を初売りに連れて出かけている間、あさひは剛志と新年二度目の神社に詣でた。
数日前より客足は幾分か落ち着きを見せ始めていたが、胸の内に仕舞っておく。あさひは家族ぐるみで仲良くしている彩月を含む友人一家と、地元を離れて、温泉地へ旅行していたことになっている。
「フルーツ飴か……お父さんの若かった頃は、りんご飴が定番だったから、こう色々あると綺麗だな」
「そうね。……お父さん、さくらんぼ半分こしない?」
「あさひが甘い物だって?雨降らないだろうなぁ」
「可愛いから、食べてみたいだけ。それにお父さん、スマホ持ってるでしょ。記念写真撮りましょう」
剛志は二つ返事で頷いた。積極的になっただの、ダイエットはやめたのかだの、思いのほか娘のことを見ていたらしい父親に、あさひは一抹の後ろ暗さを覚える。
特に、遊び歩いているのではないかという問いには、答えようがない。事実を言えば、連れ戻される以外に想像つく結果はない。